ホーム > 獣医師会からのメッセージ > 地球温暖化について
在、地球温暖化という地球規模の異変が、世界的な問題になっています。
2007年、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)から、第四次評価報告書(AR4)が発表されました。
その内容は、「ここ100年間における地球の大気および海洋の温度上昇は、人為的な温室効果ガスの増加によるものである可能性が高く、また温暖化による地球環境への影響は非常に大きなものになると予測される」というものでした。
地球の平均気温はもともと、さまざまな自然現象によって上下してきました。
恐竜がいまだ地球を闊歩していた中生代(2億5000万年前〜6500万年前)では、現在よりも10℃〜15℃ほど気温が高かったと考えられています。
比較的最近でも、たとえば1万年前まで続いていたヴュルム氷期では、地球の平均気温は現在より7℃〜8℃も低かったことがわかっています。
また、ここ2000年の短い期間にも気温は上下し、地球環境や人類の歴史・文化に、さまざまな影響を及ぼしてきました。
しかし、これらの気温の変化の原因はすべて、太陽の表面温度上昇や火山活動による二酸化炭素の上昇、地球軌道の変動などの、自然現象によるものでした。また、その変化も比較的緩やかなものでした。
しかし、ここ半世紀の気温上昇は異常といえるほど急激であり、人為的に増加した二酸化炭素を初めとする温室効果ガスによる温度変化が、主要な原因である可能性が高いと、AR4は述べています。この結論に関しては、科学的理解度が低い部分や、不確実性が残る部分があるため批判も多く、今度も引き続き研究・調査を進める必要があります。
しかし、現時点では、人為的な温室効果ガスの増加が、地球温暖化の主たる原因である可能性が最も高いと考えられています。
は、現在進行中の地球温暖化によって、今後どのような変化が起こる のでしょうか。
AR4では、地球気温や海洋の温度上昇が、水資源の枯渇、大規模な動植物の絶滅、異常気象の増加、海水面の上昇を引き起こし、地球の気候や生態系に大きく影響を与える可能性があると指摘しています。
当然、地球規模の異変は、人間社会にも大きな影響を及ぼします。
イギリスで2006年に発表された「気候変動の経済学」(スターン報告)によれば、もし人類が地球温暖化を放置した場合、今世紀後半には、世界全体でGDPの20%に相当する損失をこうむる可能性があるとしています。
業革命以降、人類の産業活動は、化石燃料の使用と切っても切り離せないものとなりました。
そのため、経済発展を続け、富を増加させるためには、より多くの石油や石炭を消費し、より多くの工業製品を製造し続けなければなりませんでした。石油ショックなどの影響により、省エネ技術が進歩した後も、化石燃料、特に石油は、工業の「血液」としての役割を果たし続けました。その結果、産業革命前後の西暦1750年から西暦2000年までの250年間に、大気中の二酸化炭素濃度は31%も増加しています。
二酸化炭素を初めとする温室効果ガスが、現在の地球温暖化を引き起こしたという予測が正しいとすれば、人類は、この250年ほどの経済的・物質的発展と引き換えに、地球の気候を大きく変動させ、多くの生物種を絶滅に追いやり、さらに自らも大きなつけを払わされることになりつつある、と言えます。
球温暖化問題に関しては、1980年代から、さまざまな形で警告が発せられ続けてきました。
二酸化炭素を始めとする温室効果ガスの抑制も、1990年代後半には世界各国の共通問題として認識されてきました。
温室効果ガスの排出を削減する国際的な枠組みとしてはすでに、1997年に議決した京都議定書があります。批准各国は2008年から2012年の間に、それぞれ定められた割合まで温室効果ガス排出量を削減するよう求められており、我が国でも、1990年度比6%の温室効果ガス排出削減目標が課せられ、政府や企業による取り組みが始まっています。
しかしながら、2007年時点で排出量がむしろ大幅に増加してしまっている国も多く、また、アメリカ・中国などの二酸化炭素を大量に排出している国は京都議定書を批准していないため、温室効果ガスの排出量削減は未だ不十分であるといわざるを得ません。
日本でも、現時点では上記の削減目標達成が困難になりつつあります。政府は達成計画の見直しを行い、目標達成を目指していますが、先行きは不透明であるといわざるを得ません。
のような現状で、私たち個人にできることはあるのでしょうか。
まずは、日々の生活の中で省エネ・省資源に取り組むことで、結果的に温室効果ガスを削減することができます。
エアコンや照明器具など家電製品や自家用車の使用を控えたり、家庭ごみを分別しリサイクルに協力すること、省エネ機器や商品を選んで使用することは、すぐにでもできる対策のひとつです。
しかしながら、これらの取り組みによる削減は全体から見て微々たるもので、これだけでは、地球温暖化緩和の対策としては不十分です。
もっとも重要なことは、私たち一人一人が地球温暖化に強い関心を持つことです。私たち自身がさまざまな情報を集め、自ら温暖化対策に取り組む姿勢を見せることは、国や企業に強い影響を与えます。温室効果ガス排出量削減に取り組む企業や国の施策が注目されれば、より多くの人びとや企業が、地球温暖化について真剣に考え、行動していくことにつながります。
そうすれば、地球温暖化防止は、最終的には国家的・国際的な合意となって、人類全体の共通問題として強く意識され、これまで以上に抜本的な対策をとることができるようになるでしょう。
室効果ガスを増加させた化石燃料の消費は、結局、人間の「今よりより豊かになりたい」という欲求が元になっています。
現在私たちが当然のことと思っている「豊かさ」の追求が、結果として「豊かさ」そのものや、これまで私たちが慣れ親しんだ地球をも壊す原因となっています。私たちはいまや、これまでどおり生活するだけで、地球温暖化に加担する存在となっています。
しかし、私たち個人が「豊かさ」を求め続けたのと同じように、地球を守りたい、と思うことも可能なはずです。
AR4では、「今後10−30年の温暖化対策が、大きな影響力を持つ」とし、さらに「今後数十年間の間に温室効果ガス排出量の増加を抑制したり、現状以下の排出量にすることは経済的に可能である」としています。
今決断すれば、私たち一人一人の意志で温暖化を食い止めることは、十分に可能なのです。